読書は歌ほどに趣味と言える域にいってないのですが、たまには本も読みます。最近、『平行線-ある自閉症者の青年期の回想-』という本を読みました。高機能自閉症とアスペルガー症候群の診断を受けている森口奈緒美さんの自伝です。
彼女は、自閉症といっても、TVドラマにもなった『光とともに』の光くんとは違うタイプのようです。「高機能」であるがゆえに、サポートや理解が得られなかったり、いじめの対象になったりと、つらい青年期を過ごされたようです。深く、重く、リアルで、読み応えのある1冊でした。下手な感想を下手な文で書くのも申し訳ないので、建築家として、考えさせられた一節を引用して、この場でもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
…居住者の健康と安全と独立性が近隣モラルに完全依存しなければならない住居は、いわば設計思想上の甘えと欠陥が招いたものとも言えるだろう。じっさい、自閉症の人の鋭敏な感覚が住宅デザインのスタンダードとなるならば、それはきっと、すべての人にとっての快適な住まいとなるのでは、と思う。
私は、知覚過敏の人でも住みやすく、学びやすく、仕事のしやすい、≪自閉症者のバリアフリー≫があってもよいのではと考えている。(p.268)
自閉症者のバリアフリー? なるほど、「バリアフリー」が叫ばれて久しく、身体が不自由な人のためのバリアフリー化は着実に進んでいます。しかし、日本において、自閉症等、認知や感覚に困難がある人のためのバリアフリーは、ほとんど考慮されてないのが現実です。
森口さんは、毎日の電車通学に地獄の苦しみを感じていたそうですが、実際、都会の公共の場において、感覚過敏のある人が全く困らない空間を実現するのは難しいかも知れません。でも、「自閉症の人の鋭敏な感覚」は、確かに「すべての人にとっての快適な」空間を実現するためのヒントとなるかも知れません。公共の空間においては難しくても、彼女の言う通り、「住宅デザインのスタンダード」ともなり得る斬新なアイデアを、自閉症や感覚過敏のある人は、すでに持っているのかも知れません。
他の本に書いてあったことですが、高機能自閉症やADHD等を含む軽度発達障害の子が普通学級で学びやすくするために配慮することは、すべての子にとって学びやすいクラスをつくることにつながるそうです。自閉症の人にとって快適な住まいがすべての人にとって快適な住まいになるという彼女の考えも、同じところに根ざしているように思います。
さて、「自閉症者のバリアフリー」を実現するために、私が建築家として何ができるか、稿をあらためて考えてみたいと思います。
*森口奈緒美著 『平行線-ある自閉症者の青年期の回想-』 ブレーン出版 ; ISBN: 4892426806